Commercial Air Conditioning04
既設配管は、
そのまま再利用できるか
配管を流用できるかどうかで、工期・費用・内装への影響が変わります。ただし見た目では判断できません。
Updated 2026.09.01
まず結論
見た目では判断できません。流用の可否は、配管そのものの状態と、採用する機種のメーカー施工要領の両方で決まります。既設配管が新設機種の条件を満たしていても、内部の状態によっては処置が必要になります。現地調査で確認するのは次の4点です。
- 新設機種が求める配管径・肉厚を満たしているか
- 配管長と高低差が機種の許容範囲に収まっているか
- 内部の残留油や異物が許容できる状態か(洗浄などの処置の要否)
- 腐食・ピンホール・断熱材の劣化がないか
R22機からの更新では冷媒と冷凍機油の世代が違うため、残留油の処置が特に論点になります。
なぜ配管流用が論点になるのか
配管の引き直しは、工事の性質そのものを変えます。
冷媒配管が壁内・天井内・床下を通っている場合、引き直しには内装の解体と復旧が伴います。営業中の店舗であれば、この作業のために休業期間が必要になることもあります。一方で流用できれば、工事は機器の入替と接続に絞られ、工期も費用も大きく変わります。
そのため「流用できるか」は、更新計画の初期段階で確認したい項目になります。ただし、流用の可否は見た目では判断できません。冷媒の世代、配管の材質・寸法、内部の状態、そして採用する機種のメーカーが定める施工条件によって決まります。
判断に関わる前提知識
配管流用の議論で必ず出てくる要素です。
- 冷媒の世代
- R22(HCFC系)、R410A、R32などの区分です。世代によって運転圧力が異なり、後の世代のほうが高い設計圧力を前提としています。このため、旧世代の配管をそのまま使えるかどうかは耐圧の観点から確認が必要になります。
- 冷凍機油
- 圧縮機の潤滑に使われる油で、冷媒とともに系統内を循環します。R22世代では鉱油系、R410A以降ではエステル油・エーテル油などの合成油が使われます。性質が異なるため、旧世代の油が残った配管に新しい機器を接続すると、油の相溶性の問題が生じ得ます。
- 残留物・スラッジ
- 長年使用された配管の内部には、冷凍機油のほか、劣化生成物や異物が残っていることがあります。これらが新しい機器の圧縮機に流入すると、故障の原因になり得ます。
- 施工要領書
- メーカーが機種ごとに定める施工の条件です。使用できる配管の径・肉厚、許容される配管長と高低差、既設配管流用時の処置(洗浄の要否や方法)が記載されています。流用の可否は、最終的にこの要領に従って判断されます。
確認する4つの観点
配管そのものの条件と、機器側の条件の両方を見ます。
1. 寸法が合うか
新設する機種が要求する配管径と、既設配管の径が一致するかを確認します。能力帯が変われば必要な径も変わるため、同じ場所への入替でも合わないことがあります。また、高い設計圧力を前提とする冷媒では、銅管の肉厚についてもメーカー施工要領で条件が示されます。
2. 長さ・経路が条件内か
機種ごとに許容される配管長と室内外機の高低差が定められています。既設の経路がこの範囲に収まっているかを確認します。曲がりの数が多い経路も、実質的な抵抗として考慮が必要です。
3. 内部の状態が許容できるか
残留油や異物がどの程度あるか、旧冷媒の世代は何かによって、洗浄の要否と方法が変わります。メーカーによっては専用の洗浄剤や洗浄機による処置を求める場合があり、その場合は流用でも一定の作業費が発生します。
4. 劣化していないか
腐食、ピンホール(微細な穴)、外的損傷、断熱材の劣化がないかを確認します。特に屋外露出部や、結露水にさらされる箇所は注意が必要です。断熱が劣化していると、流用できても断熱材の巻き直しが必要になります。
配管まわりで見ている場所
室内機と室外機をつなぐ冷媒配管のどこを確認しているかを示します。
図は横にスクロールできます。
流用しやすい条件/引き直しになりやすい条件
ただし最終判断は現地調査とメーカー施工要領によります。
- ・既設機と新設機の冷媒世代が同じ
- ・配管径・肉厚が新設機種の条件を満たしている
- ・配管長・高低差が機種の許容範囲に収まっている
- ・配管が露出しており、全長にわたって状態を確認できる
- ・圧縮機の焼損履歴がなく、系統内の汚染が想定されない
- ・配管径が新設機種の条件と合わない
- ・腐食・ピンホール・外的損傷が見つかっている
- ・過去に圧縮機の焼損があり、系統内の汚染が疑われる
- ・配管長が機種の許容範囲を超えている
- ・隠蔽部が長く、状態を確認する手段がない
洗浄という選択肢の位置づけ
洗浄は「流用するための処置」であり、無条件に安全になるものではありません。
旧冷媒機からの更新で配管を流用する場合、内部に残る冷凍機油を除去する処置が検討されます。方法は複数あり、専用の洗浄剤を用いる方式や、洗浄機を用いて循環洗浄する方式などがあります。どの方法が採れるか、そもそも流用が認められるかは、採用する機種のメーカー施工要領によって異なります。
洗浄には作業費と時間がかかります。したがって「流用=安い」とは限らず、洗浄費と引き直し費を比較したうえで、内装への影響も含めて総合的に判断することになります。また、圧縮機の焼損履歴がある系統では、洗浄しても汚染を除去しきれない可能性があるため、引き直しを選ぶ判断になることがあります。
現地で確認する項目
配管の判断に必要な情報です。現地調査時にこれらを見ています。
配管そのもの
- 配管径(液側・ガス側)と外観から分かる肉厚の情報
- 全長の概算と高低差
- 曲がりの数と経路
- 露出部・隠蔽部・埋設部の区分
- 腐食、変形、断熱材の劣化状況
系統の履歴
- 既設機の冷媒種類(銘板で確認)
- 過去の冷媒漏れ・補充の履歴
- 圧縮機の交換・焼損の履歴
- 配管の敷設時期(機器と同時か、後年の改修か)
更新後の条件
- 採用予定機種が定める配管条件
- 既設配管流用時にメーカーが求める処置
- 引き直す場合の経路確保の可否と、内装復旧の範囲
隠蔽・埋設部については、点検口の有無によって確認できる範囲が変わります。確認できない区間が残る場合は、その前提を明記したうえで計画を組みます。
見積段階で確認しておきたいこと
見積段階で確認しておきたいこと
配管流用を前提とした見積を受け取った場合は、「流用不可と判明した場合にどうなるか」を必ず確認してください。追加費用の考え方、工程への影響、内装復旧の範囲が事前に共有されていれば、着工後の認識ズレを避けられます。ピース・ビズでは、増額になりやすい条件を初回のご相談時に共有しています。
FAQ
このテーマでよくいただく質問
必ずしもそうとは限りません。流用する場合でも、メーカーが求める洗浄などの処置が必要になれば、その作業費が発生します。引き直しとの比較は、洗浄費・内装への影響・工期を含めて行う必要があります。
冷媒と冷凍機油の世代が異なるため、配管の寸法条件を満たすかどうかに加えて、内部の残留油の処置が論点になります。可否と必要な処置は採用機種のメーカー施工要領によって定められており、現地の配管状態と合わせて判断します。
点検口がある場合はそこから確認します。全区間を確認できない場合は、確認できた範囲の状態、敷設時期、漏れの履歴などから判断し、確認できない前提を明記したうえで計画します。状態次第では、既設配管を使わず別経路で敷設する案を検討することもあります。
経路と内装の状況によります。天井裏に点検口があり、解体を伴わずに敷設できる場合は営業時間外の作業で収まることがあります。壁や床の解体を伴う場合は、復旧まで含めた工程が必要になるため、休業日や区画の一時閉鎖を計画に含めます。現地調査で経路を確認したうえでご提案します。
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