Guide業務とテクノロジー2026.09.11
Updated 2026.09.11
内製・SaaS・外注の総費用を、どう比べるか
AIの月額だけを見れば、内製は驚くほど安く見えます。数千円の道具で画面もコードも作れる。ところが、人の時間を円へ置き換えた瞬間、比較の景色が変わりました。
まず結論
比較するのは月額や初期開発費だけではありません。同じ業務範囲・人数・期間で、利用料、要件、構築、移行、教育、社内工数、改修、クラウド、保守、退出を足します。AI内製は無料化ではなく、費用の一部を外部委託から社内の判断・検証・運用能力へ移す選択です。
Takeaways
- 公開価格は円へそろえ、構築や保守を含まない利用料だと明記する。
- 初期工数より、毎月続く修正・検証・運用の仮定が総費用を動かす。
月額数千円なら、内製が圧勝に見える
AIの契約料金とクラウドの小さな請求だけを表へ入れると、業務システムは安く作れそうに見えます。外注の見積やSaaSの利用者課金と比べれば、なおさらです。
しかし開発中には、業務を聞く、データを整える、例外を決める、画面を確かめる、公開する、問い合わせへ対応する時間が使われます。給与をすでに払っているから請求書には出ません。それでも、その人が別の改善へ使えた時間は消えています。
まず、公開利用料を同じ円で見る
| 例 | 一人・一か月 | 20人・36か月 |
|---|---|---|
| AppSheet Core | 約1,530円(US$10) | 約110万円(US$7,200) |
| kintone スタンダード | 1,800円(税別) | 129万6,000円(税別) |
表は横にスクロールできます。
AppSheetは2026年9月11日に公式価格を確認し、日本銀行が公表した2026年9月10日17時のドル/円153.40〜153.42円から、1ドル153.41円で概算しています。AppSheet Coreは対象のGoogle Workspace契約に含まれる場合があります。どちらも機能同等の比較ではなく、構築・移行・追加サービス・税・保守を含まない利用料だけの例です。
数字が近くても、買っているものは違う
AppSheet Coreは一人月US$10、kintoneスタンダードは一人月1,800円です。20人で三年使う利用料だけなら、上の仮定では約110万円と約130万円になります。差はありますが、この二十万円だけで選ぶことはできません。
標準機能、連携先、権限、データ量、サポート、追加サービスが違います。Google Workspaceの契約にAppSheet Coreが含まれるなら追加利用料が出ない場合もあります。反対に、必要な連携や管理機能が上位プランなら金額は変わります。価格表は入口であり、同じ仕事を終えられる証拠ではありません。
人の時間を入れると、内製の見え方が変わる
説明用に、初期600時間、社内工数を一時間4,000円、三年間の保守を月20時間と置きます。工数費用は、(600+20×36)×4,000円で528万円です。AI利用料やクラウド、外部支援はまだ入っていません。
仮にAIで初期工数だけが半分の300時間になっても、月20時間の保守が同じなら408万円です。初期は半分になりましたが、総費用は半分になりません。ここで問題はAIの月額から、毎月どれだけ判断・検証・修正が残るかへ移ります。
三年間の試算で動かす仮定
| 説明用ケース | 計算 | 工数費用 |
|---|---|---|
| 初期600時間・保守月10時間 | (600+10×36)×4,000円 | 384万円 |
| 初期600時間・保守月20時間 | (600+20×36)×4,000円 | 528万円 |
| 初期600時間・保守月40時間 | (600+40×36)×4,000円 | 816万円 |
表は横にスクロールできます。
ピース・ビズ グループの実績、外注相場、標準工数ではありません。保守には修正、検証、公開を含む想定です。機会費用を別に加える場合は、同じ人件費を二重計上しないようにします。
外注相場を、一つの数字へ丸めなかった
「中小企業向けシステム開発の相場」を一つ置けば、比較表は作りやすくなります。しかし顧客管理という同じ名前でも、移行件数、権限、監査、連携、可用性で範囲が変わります。今回確認した一次資料から、同条件の市場平均は確定できませんでした。
そのため外注は、同じ要件、移行、受入、保守、退出条件で複数の見積を取ります。安い見積から検証や移行が外れ、内製側には全部入っているなら比較になりません。反対に、SaaSが引き受ける基盤保守を内製と同じ工数で足すのも誤りです。
安い案ではなく、費用がどこへ移る案かを見る
安い案ではなく、費用がどこへ移る案かを見る
SaaSは利用料へ、外注は契約と変更依頼へ、AI内製は社内の判断・検証・保守へ費用が現れます。請求書の小ささではなく、自社が持つ能力と機会費用に合う場所へ費用を置きます。
比較表の最後に、金額以外を残す
変更の速さ、ベンダー依存、データを取り出せるか、担当者が辞めたときに続けられるか、障害時に誰が戻すか。三年間の数字が同じでも、この条件で選択は変わります。
更新が少なく標準機能で足りるなら、SaaSの利用料は保守責任を減らすための合理的な費用です。独自業務を頻繁に変え、自社に受入能力があるなら、AI内製の工数に意味があります。最安値を探すより、三年後にも払える費用構造を選びます。
選択肢を、同じ土俵へ並べてから比べる
日本の小規模組織で検討しやすい選択肢は、既製の業務SaaS、ローコード基盤、外注開発、従来型の内製、AIを使う内製の五つに大きく分けられます。ローコードだけでも、Google Workspaceと親和性の高いAppSheet、Microsoft 365とつなぎやすいPower Apps、国内の業務アプリ基盤であるkintone、表形式から始めやすいAirtable、Web・モバイル両方へ展開できるZoho Creatorなど、前提が異なります。
この一覧は製品の優劣を決めるためではありません。既にどのIdentity、データ、表計算、メール、承認経路を使っているかで、導入コストは大きく変わるからです。Power Apps Premiumは公式価格で一人月2,998円相当の年払いであり、AppSheetやkintoneとは利用料だけでなく、接続先や運用の考え方も違います。AirtableやZoho Creatorもユーザー課金と権限・データ容量の条件を確認しなければ、単純な月額比較にはなりません。
まず業務範囲、利用者、三年間の期間、既存の契約、必要な連携、移行対象をそろえます。その上で、利用料、構築、移行、教育、修正、保守、退出を同じ表へ置きます。価格だけを広く集めるのではなく、同じ仕事を最後まで終えられる案だけを比較対象に残すことが重要です。
総費用は、導入日より変更が起きた日に分かれる
最初の見積では、初期構築の金額が目立ちます。しかし運用が始まれば、組織変更、帳票追加、権限の見直し、データ修正、外部サービスの仕様変更が起こります。SaaSなら設定や追加契約の問題として現れ、外注なら変更依頼と見積の問題として現れ、内製なら担当者の判断と保守時間の問題として現れます。
AI内製は、ソフトウェアを無料にする方法ではありません。初期の実装時間を短縮できる可能性がある一方、要件を決める、確認する、公開する、次の人が直せるようにする仕事は残ります。既に給与を払っている人の時間も、空からは生まれません。別の改善や顧客対応へ使えた時間を使うなら、それは費用構造の一部です。
逆に、標準化された仕事をSaaSへ寄せる費用は、保守責任や制度追随を外へ置くための費用でもあります。最安の案を探すより、自社が長く持てる責任と、変化した時にどこで費用が増えるかを選びます。
この記事について
選択肢を同じ軸で比較した記事です。
First-hand experience
ピース・ビズ グループの非公開費用は使用していません。内部資料から必要になる仕事の種類だけを抽出し、公式の公開価格と説明用の仮定を分けています。社内工数・時給の数値は実績でも市場標準でもありません。
参照した一次情報
- AppSheet PricingGoogle確認日 2026.09.11
- kintone 料金サイボウズ確認日 2026.09.11
- Power Apps のライセンスと価格Microsoft確認日 2026.09.11
- Airtable PricingAirtable確認日 2026.09.11
- 料金 | ローコードアプリ開発プラットフォーム | Zoho CreatorZoho確認日 2026.09.11
- Well-Architected FrameworkGoogle Cloud確認日 2026.09.11
- 外国為替市況(2026年9月10日)日本銀行確認日 2026.09.11
- Published
- 2026.09.11
- Updated
- 2026.09.11
- Published by
- Peace Biz
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