Field Note業務とテクノロジー2026.09.03
Updated 2026.09.03
業務システムを作ったあと、
実際に使われるまでに何が必要か
業務システムの内製で時間がかかったのは、作る工程ではなく、その前後でした。ピース・ビズグループが自社の業務システムを内製して移行したときに、どこで止まり、何を決め直したのかを整理します。
先に要点
当社グループでは、実装が終わってからが長くなりました。時間がかかったのは通常の流れではなく、例外のときにどう扱うかの決定と、同じ情報がどこに書いてあるものを正とするかの決定です。受入条件を「画面が動くこと」ではなく「その業務が最後まで終わること」に置き直してから、判断が進むようになりました。
- 通常の流れは早く作れるが、例外の扱いを決めるのに時間がかかる
- 同じ情報の原本をどこに置くかを決めないと、二重管理が残る
- 受入条件は「動くこと」ではなく「業務が終わること」で書く
いまの業務手順をそのまま写すと、いまの不便もそのまま残ります。移行は、業務を見直す機会でもありました。
完成の定義が、作る側と使う側でずれる
作った側の「できました」と、使う側の「使えます」は同じ状態を指していません。
当社グループでは、業務で使うシステムを内製し、それまでの手順から移行しました。画面が動き、入力ができ、一覧が出る、というところまでは、想定していたより早く到達しました。そこから日常業務で実際に使われる状態になるまでのほうが、長くかかりました。
止まったのは、通常の流れではありません。通常の流れは、業務としても明快で、作るのも確認するのも比較的簡単です。時間がかかったのは、途中で条件が変わる場合、順番が前後する場合、そもそも当てはまらない場合の扱いでした。
こうした例外は、それまでは担当者の判断で処理されていました。手順として書かれていないため、移行の設計にも入っていません。移行するというのは、書かれていなかった判断を言葉にする作業でもある、というのがこの移行で得た見方です。
実装が終わった状態と、業務で使われている状態
同じシステムに対して、二つの状態があります。当社グループでは、この二つを別々に確認するようにしました。
実装が終わった状態
- 画面が表示され、入力ができる
- 想定した通常の流れが最後まで通る
- 検証が通っている
- 担当者に使い方を説明できる
業務で使われている状態
- 例外が起きたときの扱いが決まっている
- 同じ情報を別の場所に書かなくてよくなっている
- 前の手順に戻る人がいない
- 止まったときに誰へ聞くかが決まっている
見分けがつきにくい状態
- 使われてはいるが、裏で別の記録も続いている
- 一部の人だけが使っている
- 例外は毎回相談で処理されている
- 入力はされているが、結果を誰も見ていない
移行で実際に時間がかかったところ
当社グループで起きたことです。作る作業そのものより、決める作業のほうが長くかかりました。
例外の扱いを決めること
途中で条件が変わる、順番が前後する、当てはまらない。こうした場合の扱いは、それまで担当者の判断で処理されていて、どこにも書かれていませんでした。移行では、この判断を言葉にする必要がありました。
同じ情報の原本をどこに置くか決めること
同じ情報が複数の場所に書かれている状態から始まりました。どこに書いてあるものを正とするかを決めないと、システムを入れても二重管理が残ります。ここは技術の問題ではなく、業務の決めごとでした。
過去の記録をどこまで持ち込むか決めること
すべてを持ち込むと、形式の違いを吸収する作業が大きくなります。持ち込まないと、過去を参照する業務が止まります。当社グループでは、参照の頻度で線を引きました。
前の手順をいつ止めるか決めること
両方を並行させる期間が長いほど、二重入力の負担が続きます。短くすると、戻れなくなる不安が出ます。止める日を先に決めておくほうが、結果として移行は進みました。
当社グループでは、実装完了から日常利用までのほうが長かった
使われる状態にするまでにやったこと
当社グループが踏んだ順番です。実装より前に決めたことが多くを占めています。
Step 01
業務の終わりを定義する
その業務は何が起きたら終わりなのかを、画面ではなく業務の言葉で書きました。ここが決まると、受入条件を「業務が終わること」で書けるようになります。
Step 02
例外を先に集める
通常の流れではなく、例外から集めました。例外の数と種類が分かると、作る範囲の見通しが立ちます。通常の流れから作ると、後半で設計を変えることになりました。
Step 03
情報の原本を一つに決める
同じ情報が複数の場所にある状態を洗い出し、どれを正とするかを決めました。決めたあとは、他の場所は参照に徹します。
Step 04
前の手順を止める日を決める
並行期間の終わりを先に決めました。決めないまま並行させると、二重入力が常態化します。
Step 05
止まったときの窓口を決める
システムが期待通りに動かなかったときに、誰へ言えばよいかを決めました。内製の場合、ここが決まっていないと利用者は前の手順へ戻ります。
移行の前に決めること/移行の後に確認すること
当社グループが実際に使った項目です。
移行の前に決めること
- その業務は何をもって終わりとするか
- 例外が起きたときに誰がどう判断するか
- 同じ情報の原本をどこに置くか
- 過去の記録をどこまで持ち込むか
- 前の手順を止める日
- 止まったときの窓口
移行の後に確認すること
- 前の手順に戻っている人がいないか
- 裏で別の記録が続いていないか
- 例外が毎回相談で処理されていないか
- 入力された結果を実際に見ている人がいるか
- 担当者が不在のときに業務が止まらないか
「使われているか」は、利用状況の数字だけでは分かりませんでした。裏で別の記録が続いていることがあるためです。
いまの手順をそのまま写すと、いまの不便も写る
いまの手順をそのまま写すと、いまの不便も写る
既存の手順をそのままシステムに置き換えると、移行は速く進みます。ただし、その手順が抱えていた不便もそのまま残ります。当社グループでは、移行を業務の見直しと切り離さないようにしました。一方で、すべてを見直そうとすると移行が終わらないため、原本の場所と例外の扱いだけは必ず見直し、それ以外はいったんそのまま移す、という線引きにしています。
この記事で使っている言葉
- 原本
- 同じ情報が複数の場所にあるときに、どれを正しいものとして扱うかを決めた置き場所のこと。決めていないと、更新のたびにどれが最新か分からなくなります。
- 例外
- 想定した通常の流れに当てはまらない場合のこと。移行では、この扱いを決めるのに最も時間がかかりました。
- 並行期間
- 新しい手順と前の手順を同時に使う期間のこと。長くすると二重入力の負担が続くため、当社グループでは終わりの日を先に決めています。
この記事について
実際の業務・運用で得た経験をもとに整理した記事です。
First-hand experience
ピース・ビズグループが自社の業務システムを内製で開発し、既存の業務からの移行と日常利用を続けている経験にもとづいて書いています。対象はグループ内の自社利用です。顧客情報、契約条件、システム内部の構成については触れていません。
- Published
- 2026.09.03
- Updated
- 2026.09.03
- Published by
- Peace Biz
FAQ
このテーマでよくいただく質問
例外の扱いと原本の決定については、当社グループでは大きく変わらないと考えています。どちらを選んでも、書かれていなかった判断を言葉にする作業は残ります。違いが出るのは、例外に合わせて仕組みを変えられるかどうかで、内製は変えやすい代わりに、変えるかどうかを自社で判断し続ける必要があります。
業務の範囲と例外の数によって大きく変わるため、当社グループの期間をそのまま一般化することはできません。見通しを立てるうえで役に立ったのは、通常の流れの数ではなく、例外の種類を先に数えることでした。
当社グループの経験では、少人数のほうが例外が明文化されていない傾向がありました。担当者の判断で回っているためです。同じ条件がない組織でそのまま成り立つとは限りませんが、移行の前に例外を集める作業は、規模にかかわらず必要になると考えています。
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