Business Technology01

Updated 2026.09.03

Field Note

AI を使って内製すると、開発の何が変わるのか

ピース・ビズは自社のコーポレートサイトと、社内で使う業務システムを AI 支援ツールを使って内製・改善しています。速くなった部分と、速くならなかった部分を、実際にやってみた範囲で整理します。

短くなるのは実装の区間だけで、要件・検証・本番の区間は変わらないことを示す図版。

先に要点

ピース・ビズで速くなったのは実装と調査の工程で、要件を決めること、正しさを確認すること、運用に乗せることは短くなりませんでした。実装が速くなったぶん、何を作るかを決める工程と、出す前に確認する工程が全体の律速になったと考えています。

  • コードが生成できたことと、本番で問題なく動くことは別だった
  • 実装されたことと、実際に業務で使われることも別だった
  • 判断の前提と受け入れ条件を先に文章で固めた変更ほど、手戻りが小さかった

ここに書いているのは、自社のコーポレートサイトと社内業務システムを内製・改善した範囲の経験です。規模や領域が違う開発にそのまま当てはまるとは限りません。

速くなるのは実装であって、意思決定ではない

手が速くなるほど、決めていないことが目立つようになりました。

AI 支援ツールを使うようになって、ピース・ビズでは実装や調べものにかかる時間が明確に短くなりました。書き始めるまでの心理的な障壁も下がったため、試す回数が増えています。

一方で、何を作るかを決める工程は短くなりませんでした。むしろ実装が速いぶん、決めていないまま進めた部分が早く形になり、あとから作り直す量が増えました。うまくいった変更とそうでない変更の差は、自社サイトでも社内業務システムでも、着手前に前提が文章で固まっていたかどうかでした。

結果として、作業の重心が「書くこと」から「決めることと確かめること」に移りました。開発が速くなったというより、律速の位置が変わったという感覚に近いものです。

どこが速くなり、どこが変わらないか

ピース・ビズで試した範囲では、同じ作業でも工程によって効き方がまったく違いました。

はっきり速くなる

  • 既存の書き方に合わせた実装
  • 似た処理の横展開
  • 調べものと選択肢の洗い出し
  • 書き捨ての検証コードを用意すること
  • 既存コードを読んで把握すること

人が決め続ける

  • 何を作り、何を作らないか
  • どの情報を正とするか
  • 何をもって完了とするか(受け入れ条件)
  • 全体の構造をどう分けるか
  • 公開してよい範囲の判断
  • 出来上がったものを受け入れるかどうか

短くならない

  • 本番に出す前の確認
  • 実際の環境での動作確認
  • 運用に乗せるまでの調整
  • 使われるようにするための説明
  • 壊れたときの原因の切り分け

実際にやり方が変わったこと

自社サイトと社内業務システムの内製・改善で、進め方として定着したものです。

  1. 先に「何を正とするか」を決めるようになった

    同じ情報が複数の場所にある状態のまま作業を始めると、生成された内容が古いほうを参照して食い違いました。どこを原本とするかを先に決め、そこから他が自動的に作られる形にしておくと、ずれが起きにくくなりました。業務システム側でも、同じ値がいくつもの画面に散っている状態から先に整理しています。

  2. 「何をもって完了とするか」を先に書くようになった

    受け入れ条件を決めずに着手すると、動くものは出てくるのに受け入れてよいか判断できません。誰がどの場面で使い、何ができれば終わりなのかを先に書いた変更ほど、手戻りが小さくなりました。

  3. 確認を人の目に頼らない形にした

    必須項目の欠落、リンク切れ、日付の矛盾のように機械的に判定できるものは、公開前の処理で落ちるようにしています。生成量が増えるほど、目視の確認は先に限界が来ると考えています。

  4. 変更の単位を小さく保つようになった

    一度に大きく変えると、うまくいかなかったときにどこが原因か分からなくなりました。速く書けるからこそ、意図の単位で区切って進めたほうが結果として早く終わりました。

  5. 作業を並行させるときは、触る範囲を先に分けた

    複数の作業を同時に進める場合、同じ箇所を同時に触ると衝突します。範囲を先に分けておくと並行の利点が出ましたが、分けずに走らせた場合は統合に時間を取られました。

速くなったのは実装と調査。要件定義と検証は短くならなかった

本番に出すまでに通していること

生成物をそのまま本番へ出さないための、最低限の手順です。

  1. Step 01

    前提と受け入れ条件を文章にする

    何を変えるのか、変えないのは何か、何ができれば完了なのかを先に書きます。ここが曖昧なまま実装に入ると、出来上がったものを受け入れるかどうかの判断ができませんでした。

  2. Step 02

    機械で確かめられることを確かめる

    型の検査、コードの静的な確認、自動テスト、公開前の整合性チェックを通します。人が見るべき範囲を、機械で判定できないところに絞るためです。

  3. Step 03

    差分を人が読む

    変更の内容を、意図に照らして人が読みます。動くかどうかではなく、意図どおりかどうかを見る工程です。ここは生成物であっても省いていません。

  4. Step 04

    影響が戻せる形かを確認する

    実際のデータに触れる変更では、うまくいかなかったときに元へ戻せるかを先に確認します。業務システム側では、この確認を通していない変更を本番に出さない運用にしています。

  5. Step 05

    実際の見え方と使われ方を確認する

    表示や操作を含むものは、実際の画面で確認します。文字の折り返し、モバイルでの表示、キーボード操作のように、コードを読むだけでは判断できない部分があります。

生成物を受け入れる前に見ていること

速く書けることと、出してよいことは別です。

正しさ

  • 既存の動作を壊していないか
  • テストと検証が通っているか
  • 扱っている値や日付に矛盾がないか
  • エラーになる経路が放置されていないか

運用

  • あとから読んで意図が分かるか
  • 同じことを二か所に書いていないか
  • 壊れたときに原因を追える形か
  • 公開してよい情報だけを含んでいるか

実装できたことと、使われることは別

実装できたことと、使われることは別

機能が動いていても、業務の中で使われるかどうかは別でした。社内で使う業務システムではとくにはっきり出ました。誰がいつ使うのか、既存のやり方のどれを置き換えるのかが決まっていないと、動く機能が使われないまま残ります。これは AI を使うかどうかとは関係なく起きることだと考えています。

この記事で使っている言葉

原本(Source of Truth)
同じ情報が複数の場所にあるときに、どれを正とするかを決めたもの。ここから他の表示や生成物が作られる状態にしておくと、食い違いが起きにくくなります。
受け入れ条件
何ができれば完了とみなすかを、着手前に文章にしたもの。動くかどうかとは別に、受け入れてよいかを判断するために使います。
検証
作ったものが意図どおりかを確かめる作業。型の検査や自動テストのように機械で判定できるものと、実際の画面で見るしかないものがあります。
並行作業
複数の作業を同時に進めること。触る範囲を分けておかないと、あとで統合する手間が増えます。
Field Note

この記事について

実際の業務・運用で得た経験をもとに整理した記事です。

First-hand experience

ピース・ビズが自社のコーポレートサイトと、社内で使う業務システムを AI 支援ツールで内製・改善し、運用している範囲の経験にもとづいて書いています。内部の構成・仕様・扱っているデータには触れず、一般化できる進め方だけを扱います。特定の製品の比較や評価は行いません。

Published
2026.09.03
Updated
2026.09.03
Published by
Peace Biz

FAQ

このテーマでよくいただく質問

実装だけを見れば書ける量は増えますが、出てきたものを受け入れてよいか判断する人は必要だと考えています。動かないときに原因を切り分けられる人がいない状態では、公開したあとに止まるおそれがあります。

この記事では特定の製品の比較は行いません。ピース・ビズで実際に効いたのはツールの選定よりも、前提と受け入れ条件を先に文章で固めることと、公開前の確認を自動化しておくことでした。その二つがない状態では、ツールを変えても手戻りは減りませんでした。

当社では出していません。機械で確認できる範囲を自動で通したうえで、変更の差分を人が意図に照らして読む工程を残しています。動くことと、意図どおりであることは別に確認する必要があると考えています。

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